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nighthawk carbonを購入してから6ヶ月ほど経った。Nightowl Carbonではエージングに1000時間以上は確実に掛かりそうだったのだが、バーンインノイズの開発に使用したため、普通のエージング方だとどういった感じで変わるのかと言ったことが予想しかできなかった。そこで、nighthawk carbonでは普通の方法でエージングしてどれくらい変わるのだろうか?と言うことを確かめてみた。 nighthawk carbonの音 エージング方法は通常聴くボリュームより約+6dBほど上げた音量(0.32V,1kHz fullscale,25Ω負荷)(フルスケールで約4.1mwの出力。nighthawk carbonは99dB/mwなので105.12dBの音量になる。)で、通常の音楽を鳴らし続けると言うもの。バーンインノイズや、ホワイトノイズなど人工的なノイズは一切使わない。 ※比較に使ったHPT-700も同様の方法で1000時間鳴らしてある。 やる前は「1000時間鳴らしてもこの程度しか音が変わらないんだから10000時間鳴らそうが20000時間鳴らそうが大して変わらないかもなw そもそも爆音ではなくせいぜい通常よりちょっと音量でかいくらいの感じなので、効果も限定的だろう。」と思っていたのだが、約1300時間を超えたあたりから音質が次第に良くなりはじめて、約1600時間を超えてから、奥行きを除けば解像度はHPT-700とほぼ互角。約3600時間で解像度や音色はHPT-700を概ね上回っていて、奥行きも互角か僅かに下回るくらい。と言う評価に変わってきた。 だが、問題はエージング時間だけではなく、このヘッドホンはエージングに使う音源でも音質が変わってしまうこと。これはこのヘッドホンの評価が低い理由の一つなのだが、数百時間程度の再生時間だと、「エージングが進んでクリアネスが上がってきた!」と思っていても、音源変えてエージングを続けると次の日には「なんだか音が曇って聴こえる」なんてことが起きる。音質が安定しないものだから、まだエージングで変わるかな?となってしまう。nightowl carbonでも高域がきつかったりきつくなかったり安定しなかった。この音源の影響を受ける特性はエージング時間が長くなるにつれて和らいできて、安定的に高音質にはなりますが無くなるわけではない。ただ誤解してほしくないのだが、他のヘッドホンでも音源の影響を受けるのは同じ。なのだがこのヘッドホンはとりわけその影響が大きいと言うこと。 音が良い音源、音が曇る音源、クリアになる音源など色々あるが、どのジャンルが良い音とかはちょっと言いにくい。電子音でも良い音のものがあるし、生楽器でかつ同じアーチストでも音質が良かったり悪かったりする。例えば「bill evans half moon bay」は音がかなり良かったが、「bill evans new jazz conceptions」は音がやや曇りがちになった。 現状で最も良い音質を達成できたのが「松任谷由美 road show」 この音源の仕上がり音質は 傾向はニュートラル。閉塞感なし。詰まり感なし。HPT-700と比較するとクリアネスはnighthawk carbonの方がやや良い。HPT-700は濁って聴こえる。また、音の粗さがない分、nighthawk carbonの方が上質な音。音色はnighthawk carbonの方が良い。比べるとHPT-700は音が痩せてしまっていて寂しい音。解像度はHPT-700の+80段段程上。HD650(標準ケーブル)の+320段ほど上の位置づけと言う感じ。奥行きは34mってところ。(エージング時間3540時間) と言う評価である。他の音源は「松任谷由美 road show」ほどではないがnighthawk carbonは大体の音源だと傾向はニュートラル傾向〜ニュートラルだがややソフト傾向に収まりやすく、解像度はHPT-700の+10段〜+40段上、奥行きは28m〜36mの間に収まりやすい。クリアネスは音源によって違うが、3600時間を超えた段階では9割方nighthawk carbonの方がクリアだったりする。nighthawk carbonはほんの僅かに曇りが入る傾向で、HPT-700の方がシャープネスやクッキリ感は上なのだが、nighthawk carbonと比べてHPT-700は濁って聴こえてしまう。そういう理由でnighthawk carbonの方が、若干の曇りが入ってもなお、全体的に見通しの良いクリアな音に聴こえる。音色や音楽的な表現力はよほどの外れ音源でない限りnighthawk carbonの方が明らかに良い。音痩せが起きず無理のない自然な音、有機的で生命感のある音が出る。音の閉塞感や詰まり感は3600時間を超えると大半の音源で感じないが、音源によっては閉塞感や詰まり感が僅かに出ることがある。 ・nightowl carbonと比べると nightowl carbonと比べるのは、nightowl carbonはバーンインノイズを流している関係上同じ条件ではないのでほとんど予測になってしまうのだが、「003MUGEN IDC Burn-in Noise 03」を最適な音量で再生した場合のnightowl carbonの解像度はHD650(標準ケーブル)の+370段てところだったので、HD650(標準ケーブル)の+250段〜320段と比べて思ったほど差がないとも言える。音色に関しては「003MUGEN IDC Burn-in Noise 03」を流したnightowl carbonでも普通に負けてしまうだろう。nighthawk carbonの音色はそれくらい良い。 理由は開放型と密閉型の差で、nighthawk carbonのグリルを手で塞いでみると分かるのだが、グリルを塞ぐと、空気のダンプ率が上がってしまうので、振動板の動きが抑制され細かい音が消えてしまう。反面主旋律が目立つようになりクッキリとした音になり、nightowl carbonと似たような傾向になる。これは再生されるべき音が再生されないので、音が痩せて情報量としては少なくなっているし、雰囲気や感情表現力に劣ってくる。 もちろんnightowl carbonのハウジングには吸音材が入れられているし、空気抜き用の穴を設けて圧力上昇を防いでいるとメーカーは謳っていて、単純にnighthawk carbonのグリルを塞げばnightowl carbonの音になると言うわけではないのだが、聴き比べるとnightowl carbonには上で上げたようなネガがあると分かってしまう。 恐らくだが聴き比べた感じだとnightowl carbonは今回のnighthawk carbonと同じように長時間エージングをしても、恐らくHPT-700の解像度を超えることはできないんじゃないかと思う。音質面では開放型のnighthawk carbonに軍配が上がると考えて良いだろう。 尤もnightowl carbonでも「003MUGEN IDC Burn-in Noise 03」の改善版のノイズ流すと解像度でHD650(標準ケーブル)の+530段上くらいにはなるし、音色もnighthawk carbonを上回るのだが、相当良くできたノイズを流して振動板の状態を良い状態にして初めてnighthawk carbonよりも良い音色を奏でると言う感じ。密閉型と開放型の差は絶対的ではないにしてもかなりの差があるんじゃないかな。 ちなみに改善版のノイズは公開する予定はありません。以前バーンインノイズの公開をしたけど全く反響ないしね。世の中に求められてないものを公開する意義は感じないから。それにあのノイズはいくつか問題を抱えてはいるが、それなりのものは出したつもりなので、個人的にはそれで気がすんだ部分が大きい。要望が多ければ公開するけど今のところ公開の予定はないです。 その他/装着感など。 ・基本的にnightowl carbonと同じ ・ヘッドバンドにはnightowl/nighthawkのロゴが刻印されているが、わざわざ作り分けるところに拘りが感じられて良い。 総じて言うと 大体のパフォーマンスとして、nighthawk carbonは解像度でHPT-700の1〜3割増し、音色や音楽的表現力に関してはHPT-700より頭2つ以上抜けている。情緒豊かな音楽的な鳴り方だ。尤もHPT-700は1000時間程度しか鳴らしていないので、3000時間,4000時間と鳴らし込むとnighthawk carbon同様に音質が向上する可能性は十分にある。だがそれでも恐らく音色はnighthawk carbonには勝てないだろう。なぜなら聴き比べるとHPT-700もダンプされた音だと言うのが分かってしまうから。 ただし、nighthawk carbonはエージングに恐ろしく時間が掛かる機種だ。初期エージングに最低でも1600時間以上は必要。音がHPT-700(エージング時間1000時間)と比較できるレベルになりはじめたと感じたのが、1600時間以降で、メーカーの謳い文句に近い音だと感じたのが3600時間を超えてからなので、エージングには普通のヘッドホンの10〜20倍位かかると考えて良い。 メーカーがアナウンスしている初期エージング150時間では全く鳴っていない。本来のパフォーマンスの1/3も出ていないと思う。メーカーが言っている150時間は恐らく製作者の経験からそれくらい必要だと言っているだけなのだろう。確かに一般的なヘッドホンなら150時間で十分だけど。 このヘッドホンは150時間程度鳴らした段階だと、ER4SRや箱出し直後のnightowl carbonとどっこいレベルの解像度で、「解像度は決して悪くないのだが、だけど音の曇りが聴いていて気持ち良くないんだよなぁ・・・」と言う世評に近い評価だった。 メーカーが150時間の初期エージングを推奨している時点で消費者には何の落ち度もなく「音が悪い」と評価されても仕方がないだろう。(※誤解が無いよう言っておくが音が悪いと言っても解像度や定位等オーディオ的パラメーターで言えば決して悪くないのだが、聴いていて気持ちいか?と言う感覚的な部分で問題を抱えている音と言うこと) もしかしたら「初期エージングに1600時間は必要です!!!」と説明書に書いておけば評価が変わったかもしれない。 鳴らし込んだnighthawk carbonは製作者が鳴らしたかったであろう音が確かに鳴っている。nightowl carbon/nighthawk carbonをお持ちの方はぜひ鳴らし込んでみてほしい。 あとはメーカーが後継機を出すか不明だが、出すのなら振動板の材質を改善したら激烈に良くなると思う。バイオセルロースは硬さはアルミ並、振動損失は紙並の素材で理論上はアルミや紙は必要なくなる優秀な素材なのだが、全てのバイオセルロース振動板に問題があるとは言えないのだが、このオーディオクエストが使っている振動板に関してはいくらか問題があるように感じたからだ。こだわりは凄いのだが詰めが甘い。それ以外の部分は良くできていると思う。特にかけ心地に関してはピカイチだ。 ではnighthawk carbonは買いかどうか?(もう買えないけど) 使いこなしが難しいし、無条件で他人に勧められる機種ではない。無条件で勧めて良いと感じたのは今のところHPT-700だけだ。だが、HPT-700とnighthawk carbonのどちらか選べと言われたら、nighthawk carbonを選ぶし、HPT-700とnightowl carbonでもnightowl carbonを選ぶ。私は使いこなせるしね。それにnightowl carbon/nighthawk carbonはオタク的なヘッドホンだ。細部にわたって拘りが感じられる。その志の高さにビビッとくるものがあるなら買って損はない。
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2020/10/19 執筆
2020/10/20 公開
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